診察案内
麻酔科 Anesthesiology
私達は、それぞれの動物に対して最適な麻酔治療を提供できるような、テーラーメードな麻酔医療を心掛けています。
手術、救急医療、集中治療、鎮痛管理、緩和ケアといった知識をもとに、その患者様の状態に合った麻酔管理、術前・術後看護ケアを考えています。
当院では、術前検査だけでなく、患者様の年齢、性格、体格、全身状態をしっかりと評価し、執刀医、看護師、麻酔科医が連携して、安全な周術期医療を提供できるように努めています。
負担の大きい手術では、麻酔だけでなく痛みに対しても不安があるかと思います。当院では麻薬などの鎮痛剤や神経ブロック(硬膜外麻酔、浸潤麻酔など)といった様々な鎮痛方法を積極的に取り入れて、手術中の安全性だけではなく、痛みのケアも十分に行い、術後の生活の質を高めるよう努めていています。
当院で実施可能な麻酔処置
鎮静処置
鎮静処置は、鎮静剤を使用してぼーっと眠ったような状態を作り、検査・処置に対する不安や苦痛を軽減するために使用します。
動物の性格によっては、不安で攻撃的になる動物もいます。このような動物を無理やり抑えると、暴れて周りを傷つけたり、動物自身のストレスが増し負担が大きくなる可能性があります。
また、実施する検査・処置の内容によっては、動物が嫌がって動いてしまうと、正しい検査結果が得られなかったり、医療事故につながる可能性があります。
鎮静処置をすることで不安が軽減され協力的になり、処置が安全かつスムーズに行うことができます。
鎮静処置後は、ふらつきが数時間残ったり、まれに嘔吐などの症状が出る可能性がありますが、これらのリスク、実施する検査・処置の内容や性格を踏まえて、ご家族に提案させて頂きます。
吸入麻酔
吸入麻酔は、ガス状の麻酔薬を吸い込むことで麻酔作用を発揮します。
手術中は、動物が動いてしまうと手術の進行を妨げたり、意識があると手術に対する不安や恐怖を与えてしまう可能性があります。吸入麻酔を使用することで筋肉の緊張をとり、意識を消失させて完全に眠った状態を維持することができます。
吸入麻酔の使い方によっては、攻撃的な動物で触れられず注射が打てない動物に吸入麻酔薬を吸ってもらい、浅く眠った鎮静状態にするために使用する事もあります。
局所麻酔
局所麻酔は、手術によって痛みが生じる部位の神経周囲に局所麻酔薬を投与する事で、痛みの刺激を直接遮断することができる鎮痛法です。
通常の鎮痛剤は全身投与しますが、局所麻酔は手術によって痛みが出る領域に対して使用するため副作用が少なく、全体ではなく狙った部位の知覚を遮断できるため、確実に痛みを抑えられます。
全身麻酔を実施する際に局所麻酔を併用する事で、麻酔を維持するために必要な全身麻酔薬を大幅に減量することができるため、麻酔の安全性が高まります。
また、麻酔中の安全性だけではなく、全身麻酔が終わり意識を取り戻した後も痛みがない状態が続き、穏やかに術後を過ごす事ができます。
局所麻酔には、表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄クモ膜下麻酔などといった様々な方法があり、投与部位や手術内容によってこれらを使い分けています。
当院では殆ど全ての手術において局所麻酔を実施しております。
硬膜外麻酔
背骨(脊椎)の中には脳から続いている脊髄・脳脊髄液が通っており、これらを包んでいるのが硬膜です。硬膜外麻酔は硬膜の外側(硬膜外腔)まで針を進めて、局所麻酔薬を注入し、脊髄から出てくる神経を遮断します。
硬膜外麻酔によって、お腹を開ける手術やお尻や脚といった下半身の手術で生じる痛みを抑えることができる強力な鎮痛方法です。
痛みを伝える知覚神経だけでなく運動神経も同時に遮断するため、術後は運動麻痺が生じ、後ろ足を使って立てなくなります。しかしこれは一時的であり、局所麻酔薬が抜けていけば運動機能も回復していきます。しかし止血異常のある動物や腰の周囲に皮膚病がある動物に対して硬膜外に針を刺すと、硬膜外血腫や膿瘍を生じ、運動麻痺が改善しない可能性があるため使用できません。しっかりと患者様の状態を確認し、副作用が生じないように、適切な鎮痛方法を選択して実施しております。
よくある質問
麻酔は安全ですか?
こんな小さな体で耐えられるのか、麻酔の後具合が悪くなったらどうしようと不安になる方は多いかと思います。当院では、術前検査、患者様の年齢、体格、全身状態をしっかりと評価し、それぞれのリスク・合併症を考えて、麻酔計画を立てております。麻酔を専門的にトレーニングした獣医師がこれらの管理を担当し、より安全な麻酔管理を目指して日々努力しております。
麻酔を使用することによる身体への負担は?
麻酔をかけた場合の体に起こる反応としては、意識がなくなり、心拍・血圧・体温が下がって、場合によっては呼吸が止まります。生きていく上で大事な機能を麻酔をかけることで抑えてしまします。こういった反応が麻酔のリスク・合併症につながり、患者様の体への負担につながっていきます。
これらの全身麻酔の副作用を防げるように、麻酔中は心拍数、血圧、体温、呼吸状態などのモニタリングを実施し、バイタルの変化に合わせて迅速に対応できる体制で、麻酔中は患者様を看視しております。また、麻酔から覚めた後の患者様の状態もしっかりと確認し、早期回復できるような看護ケアを努めております。
麻酔から醒めますか?
麻酔時に使用する薬は投与を中止すると比較的短時間で体から排泄されて、目が覚めるものを使用しています。薬によっては拮抗薬があるため、麻酔からの覚めが悪い時には薬を拮抗することも可能です。
しかし患者様の状態や病気によっては、麻酔から覚めにくい可能性があります。それでも麻酔をかける必要性が高い場合は、術前にその点に関してしっかりとご説明させて頂きます。