診察案内
皮膚科 Dermatology
皮膚科診療では人と同様、慢性的な疾患が多く、長い期間の治療に悩まれている方が多いかと思います。
皮膚科では併発する疾患から起因することもあるため、慎重に全身状態を判断し、それぞれにベストな治療のご提案を心がけています。正確な診断、治療を行うために過去の治療反応や血液検査のデータ、普段の生活様式などは診断のために重要な情報ですので、ご来院の際はかかりつけ動物病院からのご紹介状と当院の問診票をご記入の上お持ちいただけると助かります。
問診票をダウンロードする
当院で実施可能な検査
押捺塗抹検査 / 被毛検査 / ウッド灯検査 / FNA / 皮膚生検(局所麻酔・全身麻酔)/ 細菌検査・薬剤感受性検査(外注) / 真菌培養検査 / アレルギー検査(外注)/ ホルモン検査(外注)/ビデオオトスコープ(VOS)検査
当院で実施可能な治療
膿皮症 / マラセチア症 / 皮膚糸状菌症 / アレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・接触皮膚炎など)/ 猫の好酸球性肉芽腫症候群 / 自己免疫疾患(天疱瘡・エリテマトーデス・多形紅斑・脂肪織炎・皮膚筋炎など)/ 脂漏症 / ホルモン性脱毛症(アロペシアX・甲状腺機能低下症・クッシング症候群など) / 外耳炎 / 中耳炎
よくある皮膚病
犬アトピー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎の一つです。環境アレルゲン(ハウスダスト・花粉など)に対するアレルギー体質(IgEという物質を作りやすい体質)が原因となります。この体質は遺伝するので、犬種に偏りがあります。日本では柴犬、トイプードル、シーズー、チワワ、コーギー、ゴールデンレトリーバーなどの犬種で多くみられます。
初期症状はかゆみと皮膚の赤み(炎症)ですが、慢性化により皮膚が黒く硬くなったり、脱毛したりします。赤くなりやすい部位は足先や耳、脇の下、股の間です。炎症があるところを犬は掻いたり舐めたりします。時に血が滲むくらい掻き壊すこともあります。
非常に多い病気ですので治療法はたくさんありますが、体質による病気なので多くの治療は生涯続ける必要があります。治療期間や通院頻度、内服・外用薬の可否、ご費用などを相談しながらそれぞれに合った治療プランをご提案いたします。
猫のアレルギー性皮膚炎
猫にもアレルギー性皮膚炎は認められますが、犬や人と違いIgEの関与が不明なのでアトピーとは呼びません。原因アレルゲンはノミや蚊などの虫の唾液(咬まれることで症状が出ます)や環境アレルゲン、食物などがあります。どのような年齢、猫種でも見られます。
症状としては、顔周囲(耳の付け根、あご、くび)などの掻きこわし、お腹や後ろ足の脱毛や舐めこわしが多く見られます。口の中やくちびるに赤い膨らみができることもあります。また、咳や呼吸が速いなどの皮膚以外の症状が伴うこともあります。
治療はノミがいないかを調べてから行います。食べ物の関与が疑われる場合には食事療法を行うこともありますが、食事を変えると食べない猫の場合は難しいかもしれせん。ノミと食事の関与が否定されたらお薬を使って治療します。季節性がある場合はシーズンのみの治療で可能ですが、多くは繰り返すため生涯の治療が必要になります。
膿皮症(細菌性皮膚炎)
ブドウ球菌という細菌(ばい菌)が皮膚の表面で増えすぎることによる病気です。ブドウ球菌自体は、犬の皮膚の常在菌(もともと皮膚にいて悪さをしない菌)ですが、皮膚の免疫が落ちていると過剰に増えて病変を作ります。
症状は黄色いかさぶたやフケ、円形の脱毛、ニキビ、赤み、ニオイで、多くはかゆみを伴います。強いかゆみのために血が滲むくらい掻きこわしてしまうこともあります。
治療は菌を殺す薬(抗菌薬)を使いますが、ここ数年、薬の効かない菌(薬剤耐性菌)が増加しています。薬剤耐性菌には一般的な抗菌薬は効かないので、頑張って薬を飲んでも治らない原因になります。耐性菌を増やさないために、できるだけ外用薬で治療を行う場合もあります。また、一度良くなっても繰り返す場合には、皮膚の免疫を落とす原因を見つけ、その治療も行っていきます。
マラセチア症(マラセチア皮膚炎)
マラセチアは酵母菌の一種です。酵母はカビの仲間ですが菌糸を作ったりしません。主にあぶらを食べて増殖するので、犬の体の脂っぽいところ(足先や脇の下、耳など)にもともといる常在菌です。正常より皮脂が多かったり、皮膚の免疫が落ちていたりすると、マラセチアが過剰に増えて病変を作ります。皮脂が多い犬種(シーズー、プードル、ウェスティなど)に多く見られます。
症状は皮膚や耳の赤みやベタつき、被毛の着色(赤黒くなる)、独特なニオイでかゆみを伴います。長期化すると皮膚がぶ厚くなったり硬くなったりして脱毛も起こします。
治療は皮脂と菌を物理的に落とすためのシャンプー療法と、皮膚の免疫を落としてしまう原因(アレルギーなど)へのアプローチです。長い時間をかけてぶ厚くなった皮膚をもとに戻すには、同じくらいの時間がかかります。また、再発も多いので治療のゴールを明確にし、負担の少ない治療を探します。
上皮向性リンパ腫
リンパ腫はリンパ球という白血球の一種ががん化した病気です。白血球のがんなので血液がんですが、皮膚に初期病変を作るタイプを上皮向性(じょうひこうせい)リンパ腫と言います。主に高齢の犬で見られる比較的珍しい病気です。
症状は膿皮症にとても似ており、赤み、かゆみ、フケがよく見られます。眼や口の周り、鼻などにできた場合は、皮膚の色素が薄くなりピンク色になります。薬で抑えられないような強い痒みを伴うこともあります。
治療は抗がん剤を使うこともありますが、抗がん剤以外の薬で効果が認められるものもあります。残念ながら完治は難しい病気ですが、症状を可能な限り抑えて生活の質を保つことができる治療を見つけることが可能です。
アロぺシアX
ポメラニアンやチワワ、トイプードルに多く見られる原因不明の脱毛症です。毛の生え替わりのサイクルが止まってしまうことで脱毛します。
頭と足先以外(首の下側、体幹部、尾の付け根)の毛が徐々に抜けていきます。初期には細い毛は残っていますが、進行につれて無毛になり、皮膚が黒っぽく変色したり毛穴の黒ずみが目立つ様になります。
同様の脱毛をおこす病気を除外してから治療を決定します。どの治療が効果があるかは治療の反応を見なければわからないことが多いため、動物への身体的負担だけでなく、ご費用や時間的負担も加味して治療法を検討いたします。